【井戸の中の蛙物語】「井戸で生まれたオタマジャクシ」

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ある日、一匹のオタマジャクシが古い井戸に溜まった水の中で生まれました。深く掘られた井戸には、天敵の鳥やたぬきも近寄らず安全な場所でした。

しかし、近くに親カエルはおらず、井戸の底にどうしてか辿り着いてしまったカエルの卵から一匹で生まれたのです。

ぴょこん。卵からかえったカエルの幼生オタマジャクシは、元気一杯井戸の中を泳ぎました。

井戸には、たまに雨や風でいろいろな物がやってきます。餌も水も充分にありました。

(でも一つだけ、垂直で深い深い井戸からは外に出られないのでした。)

オタマジャクシは水の中の生き物だったので、オタマジャクシのうちはそれでも構いませんでした。

ところがいつもの様に泳いでいたある日、オタマジャクシは異変に気がつきます。

自分の脇が膨らんでムズムズしているのです。

また数日後。

ニョキ。なんとオタマジャクシの脇から足が生えてきました。

オタマジャクシは後ろ足で水面を蹴るように泳ぎ始めました。

いつもより速く泳ぐことができるのでオタマジャクシはご機嫌でした。

また次の日。

ニョキニョキ。今度は手が生えてきました。

「わー、手が生えた。手が生えたぞ。」

井戸にはオタマジャクシの他には誰もいませんでしたが、オタマジャクシは生えた手足を使ってできることが増えたので大変ご機嫌でした。

また数日たったある日、オタマジャクシは自分の尻尾が短くなっていることに気がつきました。

今度は泳ぎづらくなり、オタマジャクシは残念に思いました。

Text by : ©︎100% Kyosuke Owada
(続く)